熊本地震の仮設住宅再生プロジェクト

東日本大震災から10年、そして2016年4月に発生した熊本地震から5年が経ちます。熊本地震後に建設された仮設住宅は、被災者の方々が退去したことで5年間の役目を終え、現在解体されている最中です。
それに伴い、解体された柱や土台などの木材や断熱材デコスを新たな建物へと再利用するプロジェクトが始まりました。

|経年劣化しない素材

地元工務店で構成するKKN(熊本工務店ネットワーク)では、震災直後、「仮設住宅でも、新築住宅でも、個人が住む家に変わりはない」という考えのもと、住まう人の快適性を重視して木造の応急仮設住宅を新設しました。熊本県阿蘇市は、夏は蒸し暑く冬は寒いという盆地特有の厳しい気候条件です。

<5年を経た木造の応急仮設住宅>

築5年を経た建物の石膏ボードを剥がし、断熱材(セルロースファイバー)を取り除いてみると、壁や屋根の内部には、カビはもちろん湿り気もなく、新築時となんら変わりがありませんでした。さらに、取り出したセルロースファイバーにもカビや湿り気は皆無。

私たちは、セルロースファイバーに異物が混入しないよう、丁寧に養生しながら回収し、別の建設現場へと移送する作業を続けてきました。そしてセルロースファイバーには、これから再び新たな生命が吹き込まれていきます。同製品が経年劣化しないからこそ、こうした再生が可能となるのです。

令和3年に閣議決定された「住生活基本計画」では、建築物の長寿命化により、建築から解体・再利用等までのライフサイクル全体を通じてCO2排出量をマイナスにする、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅の推進も。
脱炭素にも欠かせない“再利用”は、今後ますます取り組んでいくべき課題となりそうです。

次回ブログでも、引き続き「解体業者に聞いた!」と題し、震災後の解体現場とリサイクルについてご紹介していきます。